伊坂幸太郎の小説

サブマリン (2016年)

ストーリー

武藤(主人公)と陣内は、家庭裁判所の調査官を仕事としていて、担当する少年と会話しながら、少年をどのように更生するのが良いかを決めている。陣内は伊坂幸太郎ならではのキャラクタで、コミカルだがたまにまじめなことを言うタイプ。武藤は陣内の後輩だが、陣内とは異なり、普通の調査官のようなタイプ。

主によく出てくる少年は、棚岡佑馬、若林と、小山田俊。それぞれ3人のストーリが進められつつ、関係が徐々に明らかになっていく。棚岡は交差点で死亡事故を起こしてしまう。調査官の武藤と陣内の調査によって棚岡には動機があることを知る。棚岡は小学生のときに仲の良かった同級生を交通事故で失っていて、そのときの運転手が若林青年(当時はまだ19才)だった。若林は免許取りたてて悪い気持ちはなく、朝方判断が鈍っていたところ小学生たちにぶつかっての事故だった。その10年前の事故を担当していたのも陣内だった。

棚岡は少年の時に友達を失い、怒りをどこにもぶつけられないまま過ごし、交通事故で悪者を殺そうとしたのだった。若林青年が更生して10年経った時期に、当時の事故で恨みを持つ棚岡がまた事故を起こすという、なんとも複雑な気持ちになるストーリーとなっている。

小山田俊は、棚岡と若林とは直接関係なく、脅迫犯を脅迫することで観察対象となってしまったらしい。人に危害を加えているわけでもなく、あまり犯罪者的な要素はない。日頃からインターネットで脅迫犯を特定することを趣味のようにしているので、次に本当に事件を起こす人とそうでない人を見分けられるようになり、小学校を襲う事件を事前に見つけた。ただ、小山田俊は観察される身なのでその事件を防ぐために動くのは武藤と陣内だった。

小山田俊は、棚岡佑馬が起こした事故を調べていて、死亡した人が実は脅迫犯であることを突き止めた。それを武藤は聞くが、棚岡に知らせるか迷った。しかし本人のためにならないと思い結局知らせなかった。

感想

少年の棚岡、若林や、調査官の武藤が当事者として置かれている状況で、事故と向き合い償う葛藤を感じる。ストーリー展開は、複数のストーリを同時に展開して進め、少しずつ各ストーリのつながりを明らかにしていく感じで、面白い。

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